粘弾性流体の一様流中に置かれた物体からは,せん断波と呼ばれる渦度の波が発生します.このせん断波は,時間経過とともに広がり,その広がりの速度は粘弾性マッハ数によって決定されます.そして,これが流れを支配する方程式の型を決定します.一方で,渦度の分布はデボラ数に依存しており,デボラ数が比較的小さい場合には拡散的に,逆に大きい場合には波動的に渦度が輸送されることが明らかになりました.本研究では,従来のJosephら(1985)のモデルで使用されていた粘弾性マッハ数に加え,デボラ数もパラメータとして取り入れることで,実際の流れ場をより精密に表現できることを提唱しています.これにより,物体まわりの流れが支配方程式の型変化だけでなく,デボラ数の影響も大きく受けることが確認されました.
さらに,デボラ数が非常に大きい場合には,流体内の張力の振る舞いが重要な役割を果たすことも判明しました.特に,張力が流体に「貼り付いて」運動する現象が見られ,この点で磁気流体力学的な視点も重要であることが示唆されています.